こんにちは、ハンド&パワーツール研究室のrabiです。
DIYや電気工事の入門としてテスター(デジタルマルチメータ)を手にする方、多いですよね。電圧や抵抗を測るのは比較的簡単なんですが、いざ電流を測ろうとすると、話は別です。テスターで電流測定は危険だという話を聞いて、なぜそんなに危ないのか、その具体的な理由や、じゃあどうすれば安全に測れるのか、正しいやり方を知りたくて検索されたのではないでしょうか。特に、何も知らずに家庭用のコンセント(AC100V)にテスターのプローブを当てて、交流(AC)の電流を測ろうとするのは、短絡(ショート)や爆発につながる、絶対にやってはいけない使い方なんです。単にヒューズが飛ぶだけでは済まない、失明や重度の火傷といった、取り返しのつかない大事故になる可能性を秘めています。初心者の頃は、私もこの電圧測定と電流測定の根本的な違いをよく理解していませんでした。この記事では、なぜテスターの電流測定がそれほどまでに危険なのか、その科学的なメカニズムと、ではどうすれば安全に電流を測定できるのか(結論から言うと「クランプメーター」という専用工具を使うんですが)、その辺りをしっかり掘り下げていこうと思います。
- テスターの電流測定がなぜ短絡(ショート)になるのか、その仕組み
- 単なる感電よりも恐ろしいアークフラッシュという爆発現象の危険性
- AC電流を安全に測るための必須アイテム クランプメーターの正しい使い方
- 測定器の命綱とも言えるCAT規格とヒューズの性能の重要性
テスター、電流測定、危険性の本質

まず、なぜテスターで電流を測るのがこれほどまでに危険視されるのか、その本質を理解するところから始めましょう。実はこれ、テスターが多機能(マルチ)であるがゆえの落とし穴で、電圧測定と電流測定の内部の仕組みを根本的に混同することから始まる、最も重大なヒューマンエラーが原因なんです。
- 電圧測定との決定的な違い
- コンセントでの測定が短絡する訳
- 爆発事故とアークフラッシュ
- 正しいやり方でも潜むリスク
- なぜ交流(AC)測定がダメなのか
電圧測定との決定的な違い

テスターがマルチメータと呼ばれるのは、ご存知の通り、電圧・抵抗・電流など多くの項目を1台で測れるからですよね。でも、この中で電圧と電流の測定は、ユーザーの操作(プローブを当てる)は似ていても、テスター内部の仕組みや回路への接続方法がまったく正反対なんです。
電圧測定(V)モード:回路の傍観者
電圧測定は、回路内の2点間の電位差(電圧の高さの差)を測るのが目的です。そのため、測定したい回路(例えばコンセントの2穴)に対して並列にプローブを当てます。このとき、テスターが測定対象の回路に影響を与えてはいけないので、電圧モードのテスターは、内部抵抗が極めて高く(例えば10MΩ=1000万Ω)設計されています。抵抗が非常に高いため、テスター内部にはごくわずかな電流しか流れ込まず、回路に負荷をかけることなく安全に電圧だけを読み取ることができます。テスターは回路の傍観者として機能するわけですね。
電流測定(A)モード:回路の参加者
一方、電流測定は、その回路に流れている電気の量(電流)そのものを測るのが目的です。そのためには、回路を一度物理的に切断し、その間にテスターを直列に割り込ませて、テスター内部に電流をすべて通過させる必要があります。このとき、テスター自身が抵抗になってしまうと、回路全体の電流値が変わってしまい、正しい測定ができません。そのため、電流モードのテスターは、内部抵抗がほぼ0Ω(ゼロオーム)になるように設計されています(実際にはシャント抵抗というごくわずかな抵抗がありますが、ここではほぼ0とします)。テスターは回路の参加者として、電流の通り道の一部になるわけです。
決定的な違いのまとめ
- 電圧(V)測定:
- 目的:電位差を測る
- 接続:回路に並列
- 内部抵抗:極めて高い(MΩ単位)
- 電流(A)測定:
- 目的:電気の量を測る
- 接続:回路に直列
- 内部抵抗:ほぼ0Ω
この内部抵抗がほぼ0Ωというのが、最大のキモであり、すべての危険の始まりだということを、まず頭に叩き込んでください。
コンセントでの測定が短絡する訳

さて、ここからが本題です。テスターで起こる最も頻繁で、最も危険な事故は、電圧測定と電流測定の2つの測定方法を混同することによって発生します。
テスターのロータリースイッチ(ダイヤル)を電流測定モード(A)に設定したまま、その使い方を電圧測定(並列)と混同し、家庭用のコンセント(AC 100V)やバッテリーの端子にプローブを並列に当ててしまうケースです。
これが何を意味するか、もうお分かりですよね。内部抵抗ほぼ0Ωの測定器を、100Vの電源に直接接続する行為。これはもう、針金やドライバーをコンセントに突っ込むのと同じ、短絡(ショートサーキット)以外の何物でもありません。
オームの法則(I = V / R)で、この瞬間に流れ込もうとする電流を計算してみましょう。
- テスターの内部抵抗とリード線の抵抗の合計がわずか 1Ω の場合
- I = 100V / 1Ω = 100A
- テスターの内部抵抗とリード線の抵抗の合計がわずか 0.1Ω の場合
- I = 100V / 0.1Ω = 1000A
家庭用の安全ブレーカー(通常15Aや20A)は、もちろんこの大電流を検知して作動しますが、ブレーカーが物理的にトリップする(落ちる)よりもコンマ数秒早く、手元のテスター内部がこの莫大なエネルギーに耐えきれず、破壊されます。
絶対にダメ!
Aモードでの並列接続テスターのダイヤルが電流(A, mA, μA)を向いている状態で、コンセントやバッテリー端子に並列にプローブを当てる行為は、短絡(ショート)そのものです。テスターの爆発、火災、そしてあなた自身の重度の怪我(火傷や失明)に直結します。
爆発事故とアークフラッシュ

この種の短絡事故で本当に恐れるべきは、ビリッとくる感電ではありません。もちろん感電も危険ですが、それ以前に、テスター自体が爆発して物理的な損傷を受ける「アークフラッシュ」です。短絡によって発生した数百アンペアの大電流は、テスター内部の貧弱な配線や、場合によってはヒューズを瞬時に加熱し、蒸発させ、破裂させます。このとき、空気の絶縁が破壊され、アーク放電と呼ばれるプラズマ現象が発生します。このアークフラッシュは、以下の3つの破壊的な作用を伴います。
- 超高熱: アークの温度は数千度から1万度以上にも達し、プローブの先端やテスター内部の金属を瞬時に溶かし、蒸発させます。これに触れれば、手に重度の火傷を負うことになります。
- 強烈な閃光: 網膜を損傷させ、一時的または永久的な失明を引き起こす可能性のある、強烈な紫外線を含む光を放ちます。
- 爆発的な衝撃波(アークブラスト): 急激な温度上昇による空気の膨張と金属の蒸発が爆風を生み出し、溶けた金属片やテスターの破片を散弾のように周囲に飛散させます。
つまり、ユーザーが直面する危険は、電流が体を通過する感電以前に、テスター自体が小さな手榴弾のように手元で爆発して、手や顔に深刻な物理的損傷を与える「アークフラッシュ」であるという認識が、何よりも不可欠です。
正しいやり方でも潜むリスク

「なるほど、じゃあダイヤルを間違えなければいいんだね。ちゃんと回路を切って、直列に繋げば安全なんだね?」と思うかもしれません。確かに、それがテスターによる電流測定の正しい手順です。しかし、この正しい手順を実行するプロセス自体にも、別の種類の危険が潜んでいるんです。
リード線の差し替えと戻し忘れ
これがヒューマンエラーの王様です。テスターで電流測定(特に10Aなどの大電流レンジ)を行う場合、多くの場合、赤いリード線(テストプローブ)を、普段の電圧(V)や抵抗(Ω)を測る端子から抜き、「A」または「10A」と書かれた電流測定専用の端子に差し替える必要があります。そして、電流測定が無事に終わったとします。次に何をしますか? よし、次は電圧を測ろうと、ダイヤルだけを「V」に戻し、リード線を「A」端子に差しっぱなしにしたまま、コンセントに当ててしまう…。これが、後を絶たない重大事故の原因です。ダイヤルが「V」でも、リード線が「A」端子に刺さっていれば、テスターの内部回路は電流測定モード(内部抵抗ほぼ0Ω)のままです。結果は、先ほど説明した短絡・爆発とまったく同じです。
安全の鉄則
電流測定が終わったら、即座に赤のリード線を「VΩ」端子に戻すクセをつけましょう。テスターを片付ける時も、リード線は必ず「VΩ」端子の位置にあることを確認してください。
活線作業のリスク
そもそも、家庭用のAC100Vや工場のAC200Vといった回路の配線を切断したり接続したりする作業は、電源を遮断(ブレーカーをオフ)したとしても、高度な知識と技術を要する危険な作業です。ブレーカーを落としたと思い込んでいても、実は別の回路が生きていたり(誤遮断)、電源を切らずに作業(活線作業)しようとしたりすれば、その時点で感電や、工具による短絡事故(工具が爆発する!)につながります。これは電気工事士の資格が求められる領域であり、DIYで安易に手を出してはいけない作業ですね。
突入電流のリスク
仮に、低電圧の回路で正しく直列接続したとしても、まだ安心はできません。モーター(電動工具など)や一部の電化製品は、スイッチを入れた瞬間に「突入電流」と呼ばれる、定格電流(通常時に流れる電流)の数倍から十数倍の電流が瞬間的に流れる特性があります。例えば、定格が5Aの機器でも、突入電流が30Aに達することがあります。もしテスターの測定レンジが10Aだったら? たとえ正しい使い方をしていても、スイッチを入れた瞬間にテスター内部のヒューズが、バン!と音を立てて切れてしまいます。ヒューズが切れるだけならまだしも、機器によってはヒューズが耐えきれない可能性もゼロではありません。
なぜ交流(AC)測定がダメなのか

テスターの電流測定機能が安全に使用できるのは、そのほとんどが、電子工作や乾電池で動くおもちゃ、車のバッテリー(DC12V)といった、比較的低電圧・低電流の直流(DC)回路の測定にほぼ限定される、と私は考えています。なぜなら、乾電池(DC1.5V)をショートさせても、流れるエネルギー(短絡電流)は高が知れています。しかし、家庭のコンセント(AC100V)は、その向こう側に電力会社の発電所から続く巨大な電力網が控えています。短絡事故が起きたときにテスターに流れ込むエネルギーの桁が、DC回路とはまったく比較にならないほど大きいんです。この莫大な短絡エネルギーに、安価なテスターの保護機能(ヒューズなど)では到底太刀打ちできず、先述のアークフラッシュによる爆発事故に直結してしまうわけです。
AC100V以上の交流(AC)回路の電流測定に、テスターの(直列)電流測定機能を使うのは、原則として厳禁だと考えておくのが、DIYにおいては最も安全な判断かと思います。
テスターの電流測定と危険回避策

ここまで、テスターによる電流測定(特にAC)がいかに多層的で致命的な危険を孕んでいるかを、これでもかというほど解説してきました。「じゃあ、エアコンやドライヤーがどれくらい電気を使っているか、知りたくても測れないじゃないか!」そう思われたかもしれません。大丈夫です。その答えは非常にシンプルで、「AC電流の測定にテスターを使わない」、ただそれだけです。そのための専用の道具が存在します。
- 安全なクランプメーターの活用
- 負荷電流と漏れ電流の測定法
- ヒューズとCAT規格の重要性
- テスターは直流(DC)測定用と心得よ
- テスターで電流測定する危険の総括
安全なクランプメーターの活用

プロの電気技術者さんや設備管理者が、現場でAC(交流)の電流を測るときに、いちいちテスターで回路を切断して直列接続する…なんてことは、まずあり得ません(特殊な場合を除いて)。彼らが標準的に使用するのは「クランプメーター」という測定器です。クランプメーターの最大の利点であり、テスターに対する絶対的な優位性は、非接触で測定できることです。
- 回路を物理的に切断する必要が一切ない(感電や活線作業のリスクがゼロ)。
- 測定したい電線を、開閉式のクランプ(顎)と呼ばれる部分で挟み込むだけ。
- 電源が活きたまま(活線状態)で、安全かつ迅速に電流を測定できる。
- そもそも回路に割り込まないので、短絡やアークフラッシュの危険性が(テスターとは比較にならないほど)劇的に低い。
これは、電線に電流が流れると、その周囲に電流の大きさに比例した「磁界」が発生するという原理(電磁誘導)を利用しています。クランプ部分の鉄心(CT:カレントトランス)がこの磁界を検出し、電流値に換算しているんですね。AC(交流)の電流を安全に測定したいなら、答えは一つ。テスターではなく「クランプメーター」を一択で選ぶべきです。これが、この記事で私が最も伝えたいことかもしれません。
負荷電流と漏れ電流の測定法

クランプメーターの使い方には、目的によって大きく2種類の挟み方があるので、ここだけは間違えないように注意が必要です。
① 負荷電流(機器が使っている電流)の測定
これは、エアコン、ドライヤー、電動工具などが、動作中にどれくらいの電流を消費しているかを測定する場合です。測定方法:最も重要なルールは、電源コードを構成する複数の電線(単相なら通常2本か、アース含め3本)のうち、必ず電線1本だけをクランプすることです。もし、家庭用コンセントの電源コード全体(2本がまとまった状態)をクランプした場合、どうなるか。数値は0A(ゼロアンペア)、あるいはそれに近いごくわずかな値を示します。これは故障ではありません。なぜなら、単相交流では、往路の電流と復路の電流は、大きさが同じで向きが逆です。そのため、2本をまとめてクランプすると、互いの磁界が打ち消し合い、クランプメーターは電流ゼロと判断してしまうんですね。
② 漏れ電流(漏電)の測定
これは、本来流れるべき電路以外に、機器の絶縁不良などで電気が漏れていないか(=漏電)を測定する、安全管理上非常に重要な測定です。測定方法:今度は逆に、単相または三相の配線すべてをまとめてクランプします(または、アース線(緑色の線)1本だけをクランプします)。原理:正常な状態では、先ほど述べた通り往路と復路の電流は等しいため、まとめてクランプすれば磁界が打ち消し合って、0Aになります。しかし、もし機器がどこかで漏電していると、往路の電流の一部(漏れ電流)がアース線などに逃げてしまうため、復路の電流は往路より(漏れた分だけ)少なくなります。この往復の差分が打ち消しきれずに磁界として残り、クランプメーターが「漏れ電流」として検出するわけです。
補足:漏れ電流測定には専用機が必要
漏れ電流は通常、mA(ミリアンペア=1/1000A)やμA(マイクロアンペア=1/100万A)単位の非常に微弱な電流です。セクション①の負荷電流を測定するA(アンペア)単位のクランプメーターでは、感度が足りず測定できません(0Aと表示されてしまいます)。
したがって、漏れ電流を正確に測定する場合は、「漏れ電流計(リーククランプメーター)」と呼ばれる、微小電流専用の高感度な機器を別途使用する必要があります。
ヒューズとCAT規格の重要性

「それでもテスターの電流測定機能(DC)を使いたい」「そもそもテスターで電圧を測るのも、アークフラッシュの話を聞いたら怖くなってきた」という方。その安全意識は非常に重要です。テスターやクランプメーターの使い方だけでなく、機器自体の安全性能にも目を向ける必要があります。安価なテスターとプロ用テスターの価格差は、単なる測定精度や機能の差だけではなく、この安全性能にこそあるんです。
ヒューズの遮断容量
セクション1で述べた電流モードでの短絡事故が発生した際、ユーザーを守る最後の砦が内蔵ヒューズです。しかし、ヒューズなら何でもいいわけではありません。ヒューズの性能には重要な2つの指標があります。
- 定格電流: 何アンペアで切れるか(例: 10A)。
- 遮断容量: 短絡事故が発生した際、ヒューズ自体が破裂・爆発することなく、アークを発生させずに安全に大電流を遮断できる能力の上限値(例: 10kA = 10,000A)。
安価なテスターには、この遮断容量が極めて低い、安価なガラス管ヒューズが使われているか、最悪の場合ヒューズ自体が入っていないことさえあります。短絡事故では数百~数千アンペアの大電流が流れます。遮断容量の低いヒューズは、この大電流を遮断する前にそれ自体がアークを発生させて爆発・飛散し、保護に失敗します。結果、テスター本体が破壊され、ユーザーはアークフラッシュに直接さらされます。一方、安全規格に準拠したプロ用テスターは、必ずセラミック管などで作られた「高遮断容量(HRC)ヒューズ」を使用しており、万が一の短絡時にもヒューズが安全に電流を遮断し、爆発を防ぐよう設計されています。
安全規格測定カテゴリ(CAT)
テスターやクランプメーターの安全性を測る上で、国際的に最も重要な指標が測定カテゴリ(CAT)です。これは、国際電気標準会議(IEC)が定めた安全規格(IEC 61010)で、測定器を使用する場所に応じて、想定される危険度(サージの大きさ)を分類したものです。なぜCATが必要かというと、家庭のコンセント(100V)や工場の動力(200V)といった電圧ラインには、落雷、電力系統の切り替え、大型機器のON/OFFなどによって、定格電圧の数十倍から数百倍にもなる、非常に高い異常電圧が瞬間的に発生することがあります。これを過渡過電圧(サージ)と呼びます。CAT規格は、テスターがこの突発的なサージに耐え、内部で絶縁破壊や短絡を起こさずにユーザーを保護できる耐サージ性能を示す指標なんです。(出典:測定カテゴリと過電圧カテゴリについて | HIOKI)カテゴリは、電源の供給源(電柱)に近づくほど危険度が高くなり、数字が大きくなります。
| カテゴリ | 主な測定場所 | 危険度(サージ源) | CAT III 600V (例) | CAT II 600V (例) |
| CAT IV | 電柱からの引込線、主開閉器 | 非常に高い(落雷など) | (非対応) | (非対応) |
| CAT III | 分電盤、ブレーカー、壁裏の配線 | 高い(誘導雷、大型機器) | 安全 (6000V耐圧) | 危険 |
| CAT II | コンセント(表側)、家電製品 | 中(家電のON/OFF) | 安全 | 安全 (4000V耐圧) |
| CAT I | 電子基板、低電圧の二次側回路 | 低い(電源から絶縁) | 安全 | 安全 |
最大の誤解は、600V対応と書かれたテスターなら、AC 100Vや200Vの測定はどこでも安全に使える、と考えてしまうことです。注目すべきは、同じ定格600Vのテスターでも、CAT III 600Vのテスターは6000Vのサージに耐えるよう設計されているのに対し、CAT II 600Vのテスターは4000Vまでしか想定されていない点です。もし、安価なCAT II規格のテスターを、同じAC100Vの回路であっても、危険度の高い分電盤(CAT IIIの場所)で使用した場合、そこに6000Vのサージが発生すると、テスターは耐えられません。内部で絶縁破壊が起こり、短絡・アークが発生し、セクション1で述べた爆発事故に至るわけです。DIYで家の電気設備(分電盤や壁裏の配線)に触れる可能性がある場合は、安全への投資として、最低でもCAT III規格に対応したテスターやクランプメーターを選ぶことを、私は強く推奨します。
テスターは直流(DC)測定用と心得よ

いろいろと危険性について長く説明してきましたが、じゃあテスターの電流測定機能は一体なんのために存在するのか、という疑問に戻りますよね。私の理解では、あれはやはり、前述の通り電子工作や乾電池で動くおもちゃの修理、車の電装品(バッテリー周り)といった、低電圧・低電流(かつ電源遮断と回路切断が容易)な直流(DC)回路の測定が、主戦場なのかなと思っています。DC回路であれば、短絡してもACの電力網ほどの莫大なエネルギーは流れ込まず、テスターの高遮断容量ヒューズで十分保護できる範囲(もちろん危険はゼロではありませんが)で収まることが多いからです。DIYにおける安全な使い分けとして、「AC(交流)の電流はクランプメーター」 「DC(直流)の電流はテスター」と、きっちり使い分けるのが、安全のためのシンプルかつ確実な鉄則かもしれませんね。
テスターで電流測定する危険の総括

最後に、「テスター 電流 測定 危険」と検索してこの記事にたどり着いたあなたの安全意識は、決定的に正しかったということを再確認して、まとめとします。テスターによる(特にACの)電流測定が危険とされる理由は、単一のミスではなく、以下の四重の危険によって構成されています。
テスター電流測定に潜む四重の危険
- 【操作の誤り(短絡)】電流モード(低抵抗)のまま、電圧測定のように並列接続(例: コンセントに挿入)することで、テスター自体を短絡・爆発させるリスク。
- 【手順の危険性(ヒューマンエラー)】正しい直列接続を行おうとして、測定後にリード線を「A」端子から戻し忘れ、次の電圧測定で短絡させたり、活線作業で感電したりするリスク。
- 【機器の選定ミス(CAT)】測定する場所(例: 分電盤)に適したCAT規格のテスターを選ばず、外部からのサージによってテスターが内部破壊・爆発するリスク。
- 【保護機能の不備(ヒューズ)】安価なテスターに内蔵された遮断容量の低いヒューズが、短絡時に安全に機能せず、それ自体が爆発・飛散してアークフラッシュを防げないリスク。
ユーザーが直面している問題は、テスターでAC電流を安全に測る方法を探すことではなく、その根本的な目的である(AC回路の)電流を安全に測ることです。そして、その最適解はテスターではありません。その危険性を回避する最善かつ唯一の方法は、「テスターで安全に測る方法を探すことではなく、AC電流測定はクランプメーターという安全な道具に切り替えることです。正しい知識と、使用する場所や目的に合った正しい道具の選定こそが、あなたを重大な電気事故から守る鍵となります。工具は正しく使ってこそ、安全で楽しいDIYライフに繋がりますからね!
【免責事項】この記事は、電気測定の危険性に関する情報提供を目的としています。実際の作業には感電や火災、爆発などの重大な危険が伴います。本記事の情報を利用した結果生じたいかなる損害(機器の破損、人身事故、火災など)についても、当サイトおよび運営者は一切の責任を負いません。電気工事や測定作業は、関連法規(電気工事士法など)を遵守し、十分な知識と技術を持った方、または有資格者の指導のもとで、ご自身の全責任において行ってください。少しでも不明な点や不安がある場合は、作業を中断し、必ずお近くの電気工事業者や専門家にご相談ください。


















