マキタの電動工具を使っている最中、突然バッテリーが充電できなくなり、作業が中断して困った経験はありませんか。充電器にセットすると赤く点滅するのか原因が分からず、どう対処すれば良いか途方に暮れてしまうこともあるかもしれません。
この記事では、マキタの自己診断機能についてや、自分で試せる簡単なバッテリーリセット方法まで、段階的に解説します。また、過放電復活を試す価値はあるのか?といった判断が難しい問題や、あらゆる手を尽くした後の充電不可 復活の最終手段とは何かについても掘り下げます。
さらに、充電したままにしておくとどうなる?といった日常的な疑問にもお答えし、より専門的な対応として基盤交換は自分でできるのか、その際に必要となる修理キットの入手方法と使い方についても触れていきます。専門の修理店に依頼する流れや、気になるバッテリーの修理費用はいくら?というコスト面、そしてバッテリーをリフレッシュするにはどうしたらいいですか?という問いに対する具体的な選択肢まで網羅的にご紹介します。
この記事を最後まで読めば、自分でできるマキタバッテリー基盤リセットのポイントを理解し、高価なバッテリーを買い替える前に試すべき最適な対処法を見つけられるはずです。
- バッテリーが充電できない原因とランプの点滅が示す意味
- 自分で試せる基盤リセットや過放電からの復活手順
- 修理や交換を検討する際の費用相場と注意点
- バッテリーを長持ちさせるための適切な管理方法
マキタのバッテリー基盤リセットで復活?手順と注意点

赤く点滅するのはなぜですか?

マキタの充電器にバッテリーを接続した際、ランプが赤く点滅するのは、バッテリーや充電器が何らかの異常を検知したサインです。この点滅パターンには複数の意味があり、正しく理解することがトラブル解決の第一歩となります。
最もよく見られるのは、赤と緑(またはモデルによっては青)のランプが交互に点滅するパターンです。これは「充電不可」を示しており、バッテリーの寿命が尽きているか、内部で故障が発生している可能性が高い状態を意味します。マキタの取扱説明書にも記載がある通り、バッテリー内部のセル劣化や基板の損傷が考えられます。
一方で、赤ランプのみが点滅している場合は「温度異常」を示唆していることが多いです。リチウムイオンバッテリーは、高温または低温の環境下では保護機能が働き、充電が停止します。特に夏場の炎天下での作業後や、冬場の寒い場所に保管していた場合にこの症状が出やすくなります。
また、単なる接触不良が原因でエラー表示が出ることもあります。バッテリーと充電器の端子部分にホコリや木くずなどのゴミが付着していると、正常な通電が妨げられてしまいます。
これらの点滅パターンを正確に読み解くことで、原因を切り分け、適切な対処へと進むことができます。
点滅パターン | 状態 | 主な原因 |
赤と緑(青)の交互点滅 | 充電不可 | バッテリー寿命、内部故障、基板損傷 |
赤ランプのみ点滅 | 温度異常 | バッテリーの高温または低温 |
緑と赤の同時点滅 | 充電不可 | バッテリー寿命、内部故障 |
マキタの自己診断機能は?

マキタのバッテリーと充電器には、機器の状態をユーザーに知らせるための、非常に高度な自己診断機能が組み込まれています。これは単にランプが点灯するだけの単純な仕組みではありません。むしろ、バッテリーと充電器が互いに情報を交換し、常に最適なコンディションを保とうとするインテリジェントなシステムと考えるのが適切です。この機能により、トラブルの早期発見やバッテリーの適切な管理が可能になり、結果として安全性と作業効率が大幅に向上します。
診断機能の中で最も身近なものは、充電器に搭載されたLEDランプでしょう。このランプは、色と点灯・点滅のパターンを組み合わせることで、現在の状態を直感的に伝えてくれます。例えば、充電が完了すれば緑色に点灯し、充電中であれば赤色に点灯します。さらに、マキタ独自の「最適充電システム」の一環として、約80%の充電が完了した「実用充電完了」の状態を知らせる機能や、バッテリーが高温になっている場合に充電を一時停止して冷却ファンで冷やす「冷却中」の状態を示す表示もあります。前述の通り、充電が不可能な致命的なエラーを検知した際には、赤と緑の交互点滅で警告を発します。このように、ランプ表示を正しく理解するだけで、ユーザーはバッテリーの状態を詳細に把握できるのです。
また、バッテリー本体に備わっている残量表示ボタンも、重要な自己診断ツールの一つです。ボタンを押すと、通常4段階のLEDでバッテリーのおおよその残量が表示されます。これは、作業を始める前に十分な電力が残っているかを確認したり、作業の途中でバッテリー交換のタイミングを計ったりするのに役立ちます。しかし、この機能は単に残量を示すだけではありません。バッテリーの劣化具合を推測する手がかりにもなります。例えば、満充電した直後は4つのランプがすべて点灯するものの、少し工具を使用しただけですぐにランプが1つや2つに減ってしまう場合、内部のセルが劣化し、本来の容量を蓄えられなくなっている可能性が高いと判断できます。
そして、これらの自己診断機能の核心と言えるのが、バッテリーと充電器の間で行われるデジタル通信です。マキタのバッテリー内部には、充電回数や使用履歴、各セルの状態、温度といった詳細な情報を記録したメモリチップが内蔵されています。バッテリーを充電器に接続すると、充電器はこのメモリチップから情報を読み取ります。その情報を基に、バッテリーの状態に合わせた最適な電流と電圧を判断し、充電を制御するのです。これにより、バッテリーへの負荷を最小限に抑えながら、安全かつ迅速な充電を実現しています。
ただし、この高度な自己診断機能にも注意点があります。このシステムは、マキタ純正のバッテリーと充電器の組み合わせで最適に動作するように設計されています。そのため、互換品のバッテリーや充電器を使用した場合、通信が正常に行われず、自己診断機能が正しく働かない、あるいは予期せぬエラー表示が出ることがあります。これが、互換品の使用に伴うリスクの一つです。
このようにマキタの自己診断機能は、単なるインジケーターではなく、製品の性能、寿命、安全性を支える根幹技術です。これらの機能を正しく理解し活用することが、マキタ製品を長く、安心して使い続けるための鍵と言えるでしょう。
簡単なバッテリーリセット方法

マキタのバッテリーが充電できなくなった際、多くの場合、原因は内部のセルの寿命や物理的な故障ではなく、バッテリー自身を守るための「保護回路」が作動したことによる一時的なエラーです。これは、いわばバッテリーの頭脳である制御基板が、過放電や過負荷といった異常を検知し、セルを保護するために意図的に機能の一部をロックしている状態です。このような電子的なロックであれば、専門的な分解作業をせずとも、いくつかの簡単なリセット操作で解除できる可能性があります。高価なバッテリーを買い替えると判断する前に、ここで紹介する手順を試してみる価値は十分にあります。
ただし、リセット操作を試みる前に、必ずバッテリーの外観に異常がないかを確認してください。ケースに膨らみや亀裂、破損がある、端子部分が著しく汚損・変形している、あるいは異臭や液漏れの兆候が見られる場合は、内部で深刻な問題が発生している可能性が高いです。このような状態のバッテリーにリセット操作を行うことは危険を伴うため、直ちに使用を中止し、専門の回収窓口に相談してください。
リセット方法1:バッテリーの抜き差しによる再起動
最も手軽で基本的なリセット方法が、充電器への抜き差しを繰り返すことです。これは、バッテリー側の制御基板に直接的な再起動を促す操作です。
- まず、充電不可のエラー(赤と緑の交互点滅など)が表示されている充電器に、バッテリーをそのまま装着します。エラー表示が出ていても焦らず、10秒程度その状態を維持してください。
- 次に、バッテリーを充電器から取り外します。そして、ここが重要なポイントですが、取り外した状態で最低でも30秒以上は時間を置きます。この時間により、基板上のコンデンサなどに蓄積された微弱な電気が完全に放電され、制御基板のメモリがクリアな状態になります。
- この「装着して10秒維持 → 取り外して30秒以上待機」という一連の操作を、3回から5回ほど丁寧に繰り返します。
この物理的な再接続の繰り返しによって、保護回路のロックが解除され、充電器がバッテリーを正常に再認識することがあります。コンピューターの調子が悪い時に再起動するのと同じ原理です。
リセット方法2:充電器電源の抜き差しによる再起動
バッテリーの抜き差しで改善しない場合、充電器側のシステムも一緒にリセットする方法が有効なことがあります。
- バッテリーを充電器に接続した状態のまま、充電器の電源プラグを壁のコンセントから抜きます。
- プラグを抜いた状態で10秒から20秒ほど待ちます。これにより、充電器内部の回路もリセットされます。
- 再度、電源プラグをコンセントにしっかりと差し込み、充電が開始されるか確認します。
- もし改善が見られない場合は、この操作を2〜3回繰り返してみてください。
この方法は、バッテリーだけでなく充電器の制御システムにも再起動を促すため、両者の通信エラーが原因で充電不可に陥っていた場合に特に効果が期待できます。
これらの方法は、あくまで一時的な電子エラーを解消するための簡易的な対処法です。もし、これらのリセット操作を何度試しても状態が改善しない、あるいは一度は改善してもすぐに同じ症状が再発するという場合は、内部のセルや基板に物理的な劣化や故障が生じている可能性が高いと考えられます。その際は、無理にリセットを繰り返さず、次のステップとして専門家への相談やバッテリーの交換を検討することが賢明です。
過放電復活を試す価値はある?

バッテリーを完全に使い切った後、充電せずに長期間放置してしまうことで引き起こされる「過放電」は、リチウムイオンバッテリーにとって最も深刻なダメージの一つです。この状態になると、バッテリー内部の電圧が安全動作範囲を大きく下回ってしまいます。そうなると、バッテリー自身に内蔵された保護回路が「これ以上使用するのは危険だ」と判断し、安全のために機能を停止させ、一切の充放電を受け付けないようにロックをかけます。このため、多くの充電器は過放電バッテリーを接続してもエラーを表示し、充電を拒否します。しかし、このロックは必ずしも永続的なものではなく、適切な方法を用いれば解除し、バッテリーを復活させられる可能性が残されています。
安全に試せる唯一の方法:純正充電器による「いたわり充電」
過放電状態からの復活を試みる上で、最も安全かつ推奨される方法は、マキタ純正の充電器を使った「長時間充電」です。これは、バッテリーに対して優しくいたわるように、ごく僅かな電流で呼び水を与えるようなイメージです。
手順は非常にシンプルです。まず、充電器に過放電状態のバッテリーを接続します。充電器がエラー表示(赤と緑の交互点滅など)を示したとしても、慌てずにそのままの状態を維持してください。そして、最低でも数時間、できれば1日程度、継続して接続し続けます。マキタの高性能な充電器は、極端に電圧が低下したバッテリーを検知すると、通常の充電モードには入らず、「トリクル充電」と呼ばれる微弱な電流を流すモードに切り替わることがあります。この微弱な電流が、バッテリーの電圧を少しずつ、安全なレベルまで引き上げていきます。電圧が一定の安全ラインまで回復したことを充電器が確認すると、自動的に保護回路のロックが解除され、通常の充電モードへと移行するのです。
この方法は、バッテリーと充電器が持つ高度な安全機能に委ねるため、ユーザーがリスクを負うことなく試せる唯一の復活法です。
絶対に避けるべき危険な方法:ジャンプスタート
一方で、インターネット上では、正常なバッテリーと過放電バッテリーを電線などで直接接続し、強制的に電流を流し込む「ジャンプスタート」という方法が紹介されていることがあります。しかし、この行為は自動車のバッテリー上がりとは全く異なり、リチウムイオンバッテリーに対して行うと極めて危険です。
過放電によって深刻なダメージを受けたバッテリーセルは、内部構造が不安定になっています。そこに、何の制御もない状態で健全なバッテリーから大電流を一気に流し込むと、内部でショートが発生し、急激な化学反応を引き起こします。その結果、バッテリーは異常発熱し、内部の可燃性ガスが噴出、最悪の場合は破裂や発火に至る重大な事故につながりかねません。これは、専門的な知識と適切な保護具なしには絶対に行ってはならない行為です。
復活後の性能と注意点
純正充電器による長時間充電でバッテリーが無事に復活したとしても、過放電がバッテリーに与えたダメージが完全に消えるわけではありません。一度深いダメージを負ったセルは、たとえ再び使えるようになっても、その性能は確実に低下しています。
具体的には、以下のような症状が現れることが多くなります。
- 蓄えられる電気の総量(容量)が減少し、満充電しても以前より明らかに稼働時間が短くなる。
- 大きな力を必要とする工具(丸ノコなど)を使用した際に、パワー不足を感じやすくなる。
- 使用していない状態でも自然に放電していくスピードが速くなる。
したがって、復活させたバッテリーは、新品同様の性能を期待するべきではありません。あくまで「予備のバッテリー」として、あるいは負荷の少ない軽作業用として割り切って使用するのが賢明です。重要な作業や長時間の使用が見込まれる場面では、信頼性の高い新品のバッテリーを使用することをお勧めします。過放電からの復活は、あくまで延命措置の一つであり、バッテリーの寿命を根本的に覆すものではないと理解しておくことが大切です。
充電不可 復活の最終手段とは

これまで紹介してきた接点清掃や基板リセット、さらには過放電からの長時間充電といったあらゆる簡易的な修復方法を試してもバッテリーが息を吹き返さない場合、その問題はもはや一時的な電子エラーではなく、内部コンポーネントの物理的な寿命、あるいは深刻な故障に起因している可能性が極めて高いと判断できます。具体的には、充放電を繰り返すことで劣化したリチウムイオンセル自体の寿命、またはバッテリーの充放電を制御する電子基板の恒久的な破損が考えられます。
このような状況に陥った時、前述の通り、自力での分解修理は発火や破裂といった重大な事故に繋がるため、絶対に避けるべきです。その代わりに、安全かつ現実的な「最終手段」として、主に2つの選択肢が考えられます。
選択肢1:リサイクルバッテリー(セル交換サービス)の利用
一つ目の選択肢は、専門業者が提供する「リサイクルバッテリー」、すなわち内部のバッテリーセルを新品に交換してもらうサービスを利用することです。これは、車のエンジンが寿命を迎えた際に、車体はそのままにエンジンだけを新しいものに載せ替える作業に似ています。バッテリーの外装ケースや、頭脳部分である純正の制御基板はそのまま再利用し、エネルギー源である劣化したセルのみを全て新品に入れ替えます。
この方法には、いくつかの大きなメリットがあります。
- 純正基板による変わらぬ安心感 制御基板が純正品のままであるため、工具本体や充電器との通信機能が損なわれません。これにより、マキタ独自の最適充電システムが正常に機能し、バッテリーの性能を最大限に引き出しつつ、安全性も確保されます。互換品で起こりうる相性問題の心配がありません。
- コストパフォーマンス 新品の純正バッテリーを購入するより、一般的に3割から5割ほど安価に済ませることができます。高価な純正バッテリーの購入をためらう場合に、非常に魅力的な選択肢となります。
- 環境への配慮 まだ使える部品を再利用するため、廃棄物の削減に繋がり、環境負荷を低減できます。
一方で、注意すべき点も存在します。修理を依頼してからバッテリーが手元に戻ってくるまでには、発送や作業のための時間が必要となり、その間は工具が使えません。また、サービスの質は業者によって異なるため、交換に使用されるセルの品質や作業の丁寧さ、修理後の保証期間などをしっかりと確認し、信頼できる業者を選ぶことが不可欠です。
選択肢2:互換バッテリーの購入
もう一つの選択肢は、サードパーティ製の「互換バッテリー」を新たに購入することです。これは、純正品とそっくりな形で作られた、いわばジェネリック品のような存在です。
最大のメリットは、その圧倒的な価格の安さと入手のしやすさにあります。インターネット通販などを利用すれば、純正品の半額以下の価格で、すぐに新しいバッテリーを手に入れることが可能です。急な故障で作業を中断できない場合や、予備としてとにかく安くバッテリーを確保したい場合には、非常に便利な選択肢と言えるでしょう。
しかし、この手軽さの裏には、無視できない複数のリスクが潜んでいます。
- 品質と安全性のばらつき 互換バッテリーは、使用されているセルの品質や保護回路の性能が製品によって大きく異なります。中には、表示されている容量よりも実際の性能が著しく劣るものや、安全基準が不十分な製品も紛れています。
- 通信エラーのリスク 純正品ではない制御基板が搭載されているため、マキタの充電器との間で正常な通信ができず、最適充電が行われない可能性があります。これは、バッテリーの寿命を縮めるだけでなく、最悪の場合、異常な発熱や故障の原因にもなり得ます。
- 保証の問題 互換バッテリーが原因で工具本体に故障が生じた場合、メーカーの保証対象外となる可能性があります。
互換バッテリーを選ぶ際は、価格だけで判断するのではなく、販売者の実績、購入者レビュー、そして日本の安全基準であるPSEマークの有無などを最低限確認することが、リスクを少しでも減らす上で重要です。
結局のところ、純正品と同等の信頼性と性能を重視するならばリサイクルバッテリー、一時的な利用やコストを最優先するならば信頼できるメーカーの互換バッテリー、というように、自身の用途と価値観に応じて最適な最終手段を選択することが賢明な判断と言えるでしょう。
充電さしっぱなしにしておくとどうなる?

マキタの純正充電器は、バッテリーが満充電になると自動的に給電を停止する「過充電防止機能」を備えています。そのため、基本的には充電完了後もバッテリーを充電器にさしっぱなしにしておいても、直ちに過充電が起きてバッテリーが壊れるということはありません。
ただ、バッテリーの寿命を最大限に延ばすという観点からは、満充電になったら速やかに充電器から取り外すことが推奨されます。リチウムイオンバッテリーは、100%の満充電状態や0%の完全放電状態で保管されると、内部の化学物質が不安定になりやすく、劣化が早まる特性があるからです。
特に注意したいのが、一度充電器から取り外した満充電のバッテリーを、すぐにまた充電器に戻す「追い充電」という行為です。これはバッテリーに不要な負荷をかけることになり、劣化を促進させる一因となります。
また、充電器にさしっぱなしにしている間も、充電器自体は待機電力を消費します。わずかな量ではありますが、経済的・環境的な観点からも、使用しない時はプラグを抜いておくのが望ましいです。
長期間工具を使用しない場合の保管方法としては、バッテリー残量を30~50%程度にした状態で、工具本体から取り外し、高温多湿や直射日光を避けた涼しい場所で保管するのが最もバッテリーに優しい方法です。
リセット不可?マキタバッテリー基盤の修理と交換

基盤交換は自分でできるのか

マキタバッテリーの充電不可の原因が、内部の制御基板の故障である場合、理論上はその基板を交換することで修理が可能です。しかし、この作業を自分で行うことは、技術的な難易度が非常に高く、重大な安全上のリスクを伴うため、一般のユーザーには推奨されません。
まず、バッテリーケースを分解するには、T10サイズなどの特殊なトルクスドライバーが必要です。分解できたとしても、内部はリチウムイオンセルと基板が複雑に接続されています。金属製の工具で作業中に誤って端子間をショートさせてしまうと、火花が発生し、発火や爆発につながる危険性が常に伴います。
基板の交換には、既存の配線をはんだごてで取り外し、新しい基板に正確に再接続する作業が求められます。リチウムイオンセルは熱に弱く、はんだ付けの熱が加わることでセル自体を損傷させてしまうリスクもあります。本来はスポット溶接で接続されている箇所をはんだで代用すると、強度不足による接触不良や断線の原因にもなりかねません。
このように、基盤交換は専門的な知識、適切な工具、そして何よりも安全管理に関する深い理解がなければ、非常に危険な作業です。修理コストを抑えたい気持ちは理解できますが、火災や怪我といった深刻な事態を避けるためにも、専門知識のない方は自力での基盤交換を避けるべきです。
修理キットの入手方法と使い方

マキタバッテリーの「修理キット」として、決まったセットが市販されているわけではありません。修理を行うには、故障箇所に応じて必要な部品を個別に集める必要があります。主な部品としては、交換用の「リチウムイオンセル」や「互換制御基板」が挙げられます。
これらの部品は、主にインターネット通販サイトなどで入手することが可能です。交換用のセルとしては、「18650」という規格のものが多く使われており、様々なメーカーから販売されています。互換基板も、バッテリーの型番(例:BL1830)に対応したものが複数あります。
しかし、これらの部品を入手し、使用する際には細心の注意が必要です。
セルの品質
安価なセルの中には、表示されている容量と実際の性能が大きく異なる、いわゆる容量偽装品が紛れていることがあります。信頼性の低いセルを使用すると、バッテリーの持続時間が短いだけでなく、安全性にも問題が生じる可能性があります。
基板の互換性
互換基板は、純正品と完全に同じ仕様とは限りません。取り付けネジの位置が微妙に合わなかったり、配線の取り回しが異なったりすることがあります。適合しない基板を無理に取り付けると、正常に機能しないばかりか、ショートの原因にもなります。
前述の通り、これらの部品を使った自己修理は極めて高いリスクを伴います。部品の入手は可能ですが、それはあくまで専門的な知識と技術を持つ人が自己責任で行うためのものです。使い方を誤れば重大な事故につながるため、安易に手を出すべきではない領域と言えます。
専門の修理店に依頼する流れ

マキタのメーカー公式ではバッテリーの修理サービスを提供していないため、修理を希望する場合は、バッテリー修理を専門に行っているサードパーティの業者に依頼することになります。信頼できる業者に依頼すれば、安全かつ確実にバッテリーを再生させることが可能です。
一般的な依頼の流れは以下のようになります。
- 業者探しと問い合わせ インターネットで「マキタ バッテリー 修理」や「バッテリー リサイクル」といったキーワードで検索し、専門業者を探します。業者のウェブサイトが見つかったら、問い合わせフォームや電話で、所有しているバッテリーの型番(例:BL1860B)や症状を伝え、修理が可能かどうか、おおよその費用を確認します。
- バッテリーの発送 業者からの案内に従い、修理を依頼するバッテリーと、動作確認のために充電器を一緒に梱包して発送します。送料は自己負担となる場合がほとんどです。発送前に、修理品の取り違えを防ぐため、自分の名前などをバッテリーに明記しておくと安心です。
- 診断と修理作業 業者にバッテリーが到着すると、まず専門の機材で詳細な診断が行われ、故障原因が特定されます。主な作業は劣化した内部セルの新品への交換ですが、基板に問題があればその修理や交換も行われます。
- 修理完了と返送 修理と動作テストが完了すると、修理済みのバッテリーが返送されてきます。この際、修理代金の支払いを行います(支払いタイミングは業者により異なります)。多くの業者では修理後に数ヶ月程度の保証期間を設けているため、保証内容についても事前に確認しておくことが大切です。
バッテリーの修理費用はいくら?

マキタバッテリーの修理を専門業者に依頼した場合の費用は、バッテリーの種類や状態によって変動しますが、一般的な18Vシリーズのバッテリーであれば、8,000円から12,000円前後が費用相場となっています。
この費用には、主に新品の内部セル代と交換作業工賃が含まれています。例えば、容量が3.0Ahのものより、6.0Ahといった大容量モデルの方が、使用するセル数が多かったり高価だったりするため、修理費用も高くなる傾向にあります。また、単なるセル劣化だけでなく、制御基板にも故障が見られる場合は、追加の部品代や作業費が発生することもあります。
この修理費用を、他の選択肢と比較してみましょう。
- 新品の純正バッテリー購入: 18V/6.0Ahモデルの場合、約20,000円以上。
- 新品の互換バッテリー購入: 同等容量で5,000円~10,000円程度。
このように比較すると、修理は新品純正品を購入するよりは安価に済みますが、安価な互換バッテリーの価格帯とは重なる部分があります。
どちらを選ぶかは、コストだけでなく品質や安心感も考慮して判断する必要があります。修理(セル交換)のメリットは、外側のケースや基板は純正品を流用するため、工具本体との相性問題が起きにくい点です。一方、互換バッテリーは全てが新品になる手軽さがありますが、品質の見極めが必要です。修理の見積もり金額と、信頼できる互換バッテリーの価格を比較検討し、自分にとって最適な選択をすることが賢明です。
リフレッシュするにはどうしたらいいですか?

バッテリーの性能が落ちてきたと感じた際に「リフレッシュ」という言葉が使われることがありますが、この言葉が指す内容は状況によって異なります。バッテリーをリフレッシュするための、主な2つのアプローチについて解説します。
アプローチ1:専門業者によるセル交換
最も確実で効果的なリフレッシュ方法は、専門の修理業者に依頼して内部のリチウムイオンセルをすべて新品に交換してもらうことです。バッテリーの性能低下の根本原因は、充放電を繰り返すことによるセルの物理的な劣化です。そのため、この劣化したセルを新しいものに入れ替えることで、バッテリーは新品に近い蓄電能力を取り戻すことができます。これは一般的に「リサイクルバッテリー」や「再生バッテリー」サービスと呼ばれており、実質的な意味での完全なリフレッシュと言えます。
アプローチ2:自分で行うキャリブレーション(残量表示のリセット)
もう一つは、バッテリーの制御基板が記憶している残量表示のズレを補正する作業で、「キャリブレーション」とも呼ばれます。継ぎ足し充電を繰り返していると、基板が実際の残量を誤認識し、まだ使えるのに「残量ゼロ」と判断してしまうことがあります。この状態をリセットするために、一度バッテリーを電動工具で動かなくなるまで完全に使い切り、その後、満充電を行うという方法です。これにより残量表示が正常に戻り、本来の稼働時間まで使えるようになることがあります。
ただし、この方法はあくまで残量表示の補正が目的であり、劣化したセル自体の性能を回復させるものではありません。また、リチウムイオンバッテリーを意図的に完全放電させることは、セルに負担をかけ、過放電のリスクも伴うため、頻繁に行うことは推奨されません。性能低下を感じたら、まずは専門業者への相談を検討するのが最善の策です。
自分でできるマキタバッテリー基盤リセットのポイント

この記事で解説した、マキタのバッテリーが充電できなくなった際に自分で試せる基盤リセットや対処法のポイントをまとめました。高価なバッテリーを買い替える前に、これらの項目を確認してみてください。
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