自転車やバイクのチェーンメンテナンス、皆さんはどのようにされていますか。チェーンが伸びすぎた時、どうなるかご存知でしょうか。変速性能の低下や異音の発生、最悪の場合は走行不能になるリスクも潜んでいます。
この記事では、チェーン伸びの限界はどの程度なのか、チェーンの張り具合はどのくらいが適正ですかといった基本的な疑問にお答えします。さらに、チェーンの伸びを抑える方法や、手軽なチェーン伸びチェッカーの使い方はもちろんのこと、より精密なチェーン長さと伸びの測定基準・方法を深掘りします。
具体的なチェーン伸びの計算式から、ロードバイクのチェーンとスプロケット測定、そしてスプロケット摩耗測定方法も解説します。バイクのカムチェーンテンショナーを張り過ぎた?といった専門的な悩みにも触れながら、最終的には「まとめ:正確なチェーン伸び測定はノギスで」という結論に至るまで、網羅的に情報をお届けします。この記事を読めば、あなたのチェーンメンテナンスに関する知識が一段と深まるはずです。
- ノギスを使ったチェーン伸びの正しい測定手順
- チェーン伸び率の計算方法と交換時期の判断基準
- チェーンチェッカーとの違いや各ツールの使い方
- チェーンの寿命を延ばすためのメンテナンス方法
ノギスによるチェーン伸び測定の基本知識

チェーンが伸びすぎた時、どうなる?

チェーンが伸びた状態で走行を続けると、様々な不具合が発生する可能性があります。これは、チェーンがゴムのように物理的に伸びるのではなく、ピンやブッシュといった部品が摩耗することで、リンク間の距離(ピッチ)が長くなる現象です。
ピッチが長くなったチェーンは、スプロケット(歯車)の歯と正しく噛み合わなくなります。このため、ペダルを漕いだ力が適切に伝わらず、エネルギーロスが生じてしまいます。結果として、走行が重く感じられたり、意図した通りの加速が得られなかったりすることが考えられます。
また、変速性能にも悪影響を及ぼします。特に多段ギアを搭載した自転車では、ディレーラーがチェーンを正確に移動させられず、「変速が決まらない」「異音がする」といった症状が現れます。さらに深刻なのは、スプロケットの摩耗を急速に早めてしまう点です。伸びたチェーンを使い続けると、スプロケットの歯が削れてしまい、最終的にはチェーンだけでなく高価なスプロケット一式の交換が必要になることもあります。
チェーン伸びの限界は?

チェーン伸びの交換時期を判断する上で、一般的に用いられるのが「伸び率」という指標です。多くのメーカーや専門家の間では、伸び率が0.75%に達したら交換を意識し始め、1.0%に達したら交換が必須とされています。
伸び率 | 状態 | 対応 |
0.75% | 要注意 | そろそろ交換の準備を始める段階です。 |
1.0% | 要交換 | 直ちに交換が必要です。放置すると他の部品に悪影響を及ぼします。 |
この伸び率の限界は、使用するスプロケットの歯数によっても若干変動することがあります。歯数が多いスプロケットほど、わずかなピッチのズレが噛み合いに影響を与えやすくなるため、より厳しい基準(例えば0.8%)で交換が推奨される場合もあります。
逆に、1.0%を超えても走行自体は可能ですが、前述の通りスプロケットへのダメージが飛躍的に増大します。チェーン交換だけで済むはずだったメンテナンスが、ドライブトレイン全体の交換という高額な修理につながる可能性があるため、1.0%という限界値は厳守することが賢明と言えます。
チェーンの張り具合はどのくらいが適正ですか?

ここで言う「チェーンの張り具合」とは、チェーンの「伸び(摩耗)」とは異なり、「たるみ(スラック)」のことを指します。チェーンは適度なたるみがなければ、スムーズに機能しません。
チェーンを張りすぎると、モーターやクランクの軸、そしてそれらを支えるベアリングに常に過大な力がかかり続けます。この状態は部品の早期摩耗や破損を引き起こす原因となります。特にバイクの場合、サスペンションが動いた際にチェーンがさらに張られるため、十分なたるみがないと非常に危険です。
一方、チェーンがたるみすぎていると、走行中にチェーンが暴れてフレームに当たって異音や傷をつけたり、スプロケットからチェーンが外れる「チェーン落ち」のリスクが高まります。
適正なたるみの量は、自転車やバイクのサービスマニュアルに記載されているのが一般的です。例えば、バイクではチェーンの中央部分を上下に動かし、その振れ幅が20mm~30mm程度になるよう調整することが多いです。たるみを調整する機構は車両によって異なりますが、定期的に確認し、常に適正な範囲に保つことが安全な走行と部品の長寿命化につながります。
チェーンの伸びを抑える方法

チェーンの伸び、つまりピンやブッシュの摩耗を完全に防ぐことはできませんが、日々のメンテナンスによってその進行を大幅に遅らせることは可能です。最も効果的な方法は、定期的な洗浄と適切な注油です。
チェーンには走行中に砂やホコリ、金属粉などが付着します。これらが潤滑油と混ざると、研磨剤のような働きをしてしまい、部品の摩耗を加速させます。そのため、注油の前には必ずチェーンクリーナーやブラシを使って、リンクの内部に入り込んだ汚れまで丁寧に除去することが大切になります。
洗浄後に行う注油も重要です。使用するチェーンルブ(潤滑油)には、大きく分けて「ウェットタイプ」と「ドライタイプ」があります。
ウェットタイプ
オイル状で粘度が高く、潤滑性能や耐久性に優れています。雨天走行にも強い反面、汚れが付着しやすいというデメリットがあります。こまめな洗浄が前提となります。
ドライタイプ
揮発性の溶剤に潤滑成分(ワックスやPTFEなど)が含まれており、塗布後に溶剤が蒸発して乾いた潤滑膜を形成します。汚れが付着しにくく、チェーンを綺麗に保ちやすいですが、ウェットタイプに比べて潤滑の持続性が短く、雨で流れやすい傾向があります。
自分の走行環境やメンテナンスの頻度に合わせて適切な潤滑油を選び、正しい手順で洗浄と注油を行うことが、チェーンの寿命を延ばすための鍵となります。
チェーン伸びチェッカーの使い方は?
チェーンチェッカーは、チェーンの伸び率を手軽に確認できる専用工具です。ノギスのように数値を読み取る必要がなく、「使えるか、交換か」を直感的に判断できるため、初心者の方にも扱いやすいのが特徴です。
アマゾン:シマノ(SHIMANO) 工具 TL-CN42 チェーン伸びチェッカー Y12160000
使い方は非常にシンプルです。
- まず、チェーンの上側(張っている側)にチェッカーを当てます。下側はディレーラーによってテンションが安定しないため、測定には不向きです。
- チェッカーの片方の端(突起)を、チェーンのローラーの間にしっかりと引っ掛けます。
- もう片方の端を、チェーンの上にゆっくりと下ろします。この時、測定したい伸び率が刻印された側(多くは0.75%と1.0%)を使用します。
- チェッカーの先端がローラーの間にストンと完全に入ってしまえば、チェーンがその数値以上に伸びていることを示します。もし、先端が乗っかるだけで入らなければ、まだ伸びは限界に達していません。
例えば、「0.75」と書かれた側が完全に入れば「そろそろ交換時期」、「1.0」と書かれた側が入れば「即交換が必要」と判断できます。
ただし、注意点もあります。チェーンは場所によって伸び方が不均一な場合があるため、必ず3~4箇所、異なる場所で測定することが推奨されます。また、製品によっては測定精度にばらつきがあることも事実です。あくまで簡易的な目安として活用し、より正確な状態を知りたい場合は、次に解説するノギスでの測定が有効となります。
実践!チェーン伸び測定をノギスで行う方法

チェーン長さと伸びの測定基準・方法
ノギスを使用すれば、チェーンチェッカーよりも客観的で正確な伸び率を測定できます。測定方法はいくつかありますが、ここでは代表的な2つの方法を紹介します。どちらの方法でも、測定時にはチェーンにテンションをかけ、ピンと張った状態で行うことが正確な数値を得るためのポイントです。
方法1:複数リンクのピン中心間距離を測る
この方法は比較的シンプルで、自転車のチェーン測定でよく用いられます。
- 測定するリンク数を決めます。リンク数が多いほど測定誤差は少なくなります。一般的には11リンクや12リンク(24ピッチ)を基準にすることが多いです。
- ノギスのジョウ(くちばし)を、基準となる最初のローラーと、決めたリンク数の最後のローラーに当てて、その長さを測定します。ピンの中心から中心を測るのが理想ですが、ローラーの外側から外側、あるいは内側から内側で統一して測っても計算で補正できます。
- 新品のチェーンの基準寸法と比較して、どれだけ長くなっているかを確認します。
方法2:ローラーの外々・内々寸法から算出する
この方法はより精密で、バイクや産業用チェーンの測定で使われることがあります。
- まず、測定しやすいリンク数(例えば8リンク)を決めます。
- ノギスの外側用ジョウを使い、基準となるローラー間の外側から外側の長さ(L2)を測定します。
- 次に、同じリンク間で、ノギスの内側用ジョウ(細いクチバシ部分)を使い、内側から内側の長さ(L1)を測定します。
- 測定した2つの数値を使い、「(L1 + L2) ÷ 2」という計算で、より正確なピン中心間の距離を算出します。
いずれの方法でも、チェーンは均一に摩耗するわけではないため、必ずチェーンを少しずつ回しながら数カ所で測定し、最も伸びている箇所の数値を採用することが大切です。
チェーン伸びの計算式

ノギスでチェーンの長さを実測したら、次の計算式を用いて伸び率(%)を算出します。
チェーン伸び率 (%) = ( (実測した長さ - 新品時の基準長さ) ÷ 新品時の基準長さ ) × 100
この計算を行うためには、「新品時の基準長さ」を知っておく必要があります。自転車やバイクのチェーンのピッチ(ピン中心から隣のピン中心までの距離)は規格で決まっています。
例えば、一般的な自転車用チェーンのピッチは12.7mm(1/2インチ)です。 もし、12リンク(24ピッチ)の長さを測定する場合、新品時の基準長さは 12.7mm × 24 = 304.8mm
となります。
計算例
仮に、ノギスで12リンクの長さを測定したところ「307.2mm」だったとします。 これを上記の計算式に当てはめてみましょう。
- 伸びの長さを計算:
307.2mm (実測長) - 304.8mm (基準長) = 2.4mm
- 伸び率を計算:
(2.4mm ÷ 304.8mm) × 100 ≒ 0.787%
この結果から、このチェーンの伸び率は約0.79%であり、交換を検討すべき「要注意」の段階にあることが分かります。このように、具体的な数値を出すことで、感覚に頼らない客観的な交換時期の判断が可能になります。
ロードバイクのチェーンとスプロケット測定

ロードバイク、特に10速、11速、12速といった多段変速モデルのチェーンとスプロケットは、非常に精密に設計されています。そのため、チェーンの伸びが性能に与える影響は他の車種よりもシビアに現れます。
前述の通り、ロードバイクのチェーン測定では、ノギスを使って複数リンク(例えば12リンク)の長さを測る方法が一般的です。新品の12リンクの基準長は304.8mmであり、実測値が307.9mm(伸び率約1%)に達する前には交換することが強く推奨されます。
ロードバイクで特に注意すべきは、高価なスプロケット(カセットスプロケット)への影響です。軽量化のためにアルミニウムやチタンといった比較的柔らかい素材で作られていることが多く、伸びたチェーンを使い続けると、あっという間に歯が摩耗してしまいます。スプロケットが摩耗すると、たとえチェーンを新品に交換しても「歯飛び」という、チェーンが歯を滑る現象が起きてしまい、結局スプロケットも交換せざるを得なくなります。
チェーンは数千円で購入できる消耗品ですが、カセットスプロケットはグレードによっては数万円にもなります。コスト面を考えても、チェーンの状態をノギスでこまめに測定し、0.75%程度の伸びで早めに交換することが、結果的に全体のコンポーネントを長持ちさせる秘訣です。
スプロケット摩耗測定方法も解説

チェーンの伸びを管理するのと同時に、スプロケットの摩耗状態を確認することも極めて大切です。伸びたチェーンはスプロケットの摩耗を加速させ、摩耗したスプロケットは新品チェーンの寿命を縮めるという悪循環に陥るためです。
スプロケットの摩耗は、主に目視で確認します。新品のスプロケットの歯は、頂点が平らな左右対称の形をしています。しかし、摩耗が進行すると、歯の形が変化してきます。
摩耗のサイン
- 歯が鋭くなる: 歯の頂点が削れて、新品の時よりも尖って見えます。
- フカヒレ状(シャークフィン)になる: チェーンに引っ張られる方向(進行方向)に歯が削られ、フカヒレやサメの歯のように、片側がえぐれたような非対称の形になります。
- 歯の谷が深くなる: チェーンのローラーが当たる谷の部分が削れて、えぐれたように見えます。
特に、普段からよく使用するギア(平地で巡航する際に使う中間のギアなど)は摩耗が早く進む傾向にあります。チェーン交換の際には、必ずスプロケットの状態も確認し、上記のような摩耗が見られる場合は、同時に交換することを検討すべきです。専用のスプロケット摩耗チェッカーも存在しますが、まずは目視での点検を習慣づけることが重要です。
バイクのカムチェーンテンショナーを張り過ぎた?

このページにたどり着いた方の中には、バイクの「カムチェーン」について調べている方もいるかもしれません。カムチェーンは、クランクシャフトの回転をカムシャフトに伝え、エンジンバルブを開閉させるための重要な内部部品であり、後輪を駆動するドライブチェーンとは全く別のものです。
カムチェーンにも、そのたるみを適正に保つための「カムチェーンテンショナー」という部品が備わっています。これには、スプリングの力で自動的に調整するオートテンショナーと、手動で調整するマニュアルテンショナーがあります。
もし、マニュアルテンショナーの調整を誤ってカムチェーンを張り過ぎてしまうと、エンジンに深刻なダメージを与える可能性があります。症状としては、エンジンから「ヒューン」「ウィーン」といった特徴的なうなり音(異音)が発生します。これは、張りの強すぎるチェーンが、ガイドやスライダーといった樹脂部品に強く擦り付けられることで起こる音です。この状態を放置すると、チェーン自体の伸びや摩耗はもちろん、ガイド類の破損、最悪の場合はバルブタイミングが狂ってエンジンブローに至る危険性もあります。
カムチェーンの調整は非常にデリケートな作業であり、サービスマニュアルに記載された正規の手順に従う必要があります。少しでも不安がある場合は、専門知識のあるバイクショップに相談することが賢明です。
まとめ:正確なチェーン伸び測定はノギスで

この記事では、チェーンの伸びをノギスで測定する方法を中心に、関連する様々な情報をご紹介しました。最後に、重要なポイントをまとめます。
安全・規格・メーカー公式リンク集
- 安全情報 (NITE「製品事故・リコール情報」など)
- 規格 JISC「JIS検索」
- 主要チェーンメーカー公式サイト(順不同)
- KMC
- 和泉チエン
- Wippermann
- SHIMANO
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- Campagnolo
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